夷川
京の町の人は、町というものを生命と財産を守る共同体として認識し、自分達の町は生活保障まで含めて、自分達の手で守り育てていこうとしたのである。注1)
施主所有の築100年経った真壁造木造建築物(現ギャラリー)の東側。元々はここ敷地間口いっぱいに同施主所有の同じく築100年の表屋造り町屋があった。その町屋を、①解体撤去しテナント用建物に建替え、②奥の母屋も建替え、③現ギャラリーは耐震改修とする事が今計画である。母屋とテナントの出入りは新しく作った"路地(ろうじ)"から行う動線とした。それはプライベートとパブリックの動線が重なったもので、普段より施主が地域との密接な関わり方をされている姿勢が反映されている。"ろうじ"はいずれ"小路"へと成長してくれたら叶ったりで ある。テナントは木造2階建て。ファサードと路地側の壁は、左官下地の上に吹付け塗装仕上(昨今街中散見される”モルタル一発仕上げ”はムラを含めモノトーン表現で見目に当初は趣あるが、時間が経つとヘアクラックは免れない様子。「ソレも味。」と許容できるならよいが。)で。木造であるため上下階間の防音遮音にはとりわけ配慮した(1棟貸しの場合を除く)。施主の構想を汲み、業種を選ばないシンプルな外観になるよう心がけた上で(ちなみに軒庇、付け庇は一部指定区域を除いて京都市景観条例でマストなデザインボキャブラリー。。)、路地への出入り易さを考慮して設けた建物の隅切りは、建物の佇まいや在り方にも貢献できるよう配慮した。この"隅切り"は、垂線に対して角度を持たす事で、陽が射す季節時間帯によっては外壁に違った表情を生み出す事や、東から見た時は上部にせり上がった外壁のシルエットに見える事、そして初めは意図していなかった事であるが"鬼門、裏鬼門"に設ける隅切りの作法にも適ったことなど。
注1)山田敦子 『近世京都における町自治について』
20200225追記)通り面する建築物にいまや4店舗入っているせいか、路地を介して手前から奥へと往き来するヒト達(お客さん)が多い昨今。その方たちが”隅切り部”を雨宿りや待ち合わせ場所に利用されている風景に面白みあり。
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長岡京市のサービス付き高齢者向け住宅
長岡京市にある「サービス付き高齢者向け住宅」『next洛楽』。鉄筋コンクリート壁構造5階建て。終の棲家とは。。近傍との交流とは。。事業主の思想があり実現し得たサ高住。内外に開かれた食堂がキーを握る。住戸部は最小床面積30㎡タイプをはじめ他に2タイプの間取り、全て併せて30住戸のいわゆる短冊型のそれではない窓面積が豊富なプラン。全ての住戸の風呂には窓が有り、入浴時には開けた景色も望める。ベランダと住戸部分も床がゾロで仕上げされるため専有面積のあるまま住戸の広さを体感できるかしら。
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小川通りの住宅
旧市街地美観地区内につくる。木造在来軸組工法2階建て。ファサードはオーバーハングした2階部を”うだつ”と軒、ひさしが合体したフレームが囲む。京都市景観条例の規制をクリアした上で出来得るヒトツの解。(※追記。2018年度、主事異動により不可?不解。。)。また正面3枚引き木製建具は”横”千本格子にすることでモダンな佇まいになる。外壁、内装とも”見える、触れる”部分は全て無垢材もしくは水性塗料でしあげるため、経年変化による趣の変遷を味わえるよう配慮。プランは前面がパブリック、後ろがプライベート空間としての町屋のそれである。
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350年住宅
長岡京市石田家の耐震改修並びに増改築工事。築350年の古民家。改築後は国登録有形文化財に認定される。以下写真はビフォーアフター。
復元と改修
かつてファサードを構成していた建具が取り除かれ駐車場をこしらえたプランになってから幾余年。。しかし当時の建具を保存しておられた施主。それらを本来のところに再度復元配置することでかつての外観を再現する。建物は明治初期に蚕糸問屋として建てられた典型的な京町家スタイルを残している。改修後は千本格子の向こうで『百芳軒』の屋号にて定期的に町屋コンサートやそのほか催しが行われ、都度盛況とのこと。“京都を彩る建物や庭園”(京都市 文化市民局 文化芸術都市推進室 文化財保護課)に認定される。
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下鴨の住宅
2戸1の長屋を切り離し建替えた、敷地20坪、建蔽率50%の狭小住宅。退役されたご主人と、現役ピアノ教師の奥さんが住まう。ピアノ室は、防音効果をねらいつつ、地下室の容積不算入の規定を利用して地階に。一階には、将来のことを考えて、寝室と風呂等の水廻りを撤去可能な一枚の壁を隔てて、両隣に配置。ベッドの配置は狭小住宅ゆえに、やや変則的。二階にはリビングダイニングがあり、前面道路に面する大きな出窓からは西日がよく射すが、ペア硝子と厚手のスクリーン等によって熱取得を抑えつつ、大きな光壁となりうる。以下写真は長屋を切り離す以前と、それ以後。
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山村都市交流の森
花背山村都市交流の森【翠峰荘】。桂川と安曇川ふたつの源流にまたがる1000haの広大な森林。美しい森林の中に45kmの散策道が整備されている。翠峰荘はここを訪れる人々のための施設で、休憩ホール、集会場、家族宿泊室、大浴場、屋外施設からなる。内外壁に杉板を、屋内空間の柱梁は杉皮去り丸太を使用する。床はヒノキ板素地仕上げとして暖かい雰囲気を演出するよう心がけた。
翠峰荘HP
林業総合センター
雲ヶ畑林業総合センター。鴨川の源流中津川の流れる中積川町にある建物。地元森林組合によってさまざまな森林活動会場として活用されている。敷地の段差を利用し、前面にピロティを設け広場と一体利用することにより屋外活動の会場となる。木材、土壁を素材とし、屋根は越屋根として風と光を取り込むよう配慮した。
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右京区の蕎麦処
越畑フレンドパーク松原。左京区の西北端八木町に隣接する越畑。棚田の美しい風景が残る昔ながらの農山村。ここで地元産のそばを味わいのんびりと風景を楽しむことができる。建物は木材と土壁、土間(三和土)を使用。屋根は金属板の入母屋型。越屋根からは風と光を取り入れることを心がけた。
京都市:都市農村交流施設HP
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武内建築計画事務所
武内文男 大阪大学工学部卒
一級建築士第79876号
〒604-0814 京都市中京区東洞院通り二条上ル壷屋町533-2
tel.075-256-1792
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